Pと後輩とカンナ

後輩のあーちゃんはあたしよりも3つ上だ。
元OL。
この人もなんかの間違いで技工士やってる。
あーちゃんめっちゃ大人なんだ。
このカンナはくっそガキなんだけど、あーちゃん大人。
さーすが年上(拍手喝采)てな感じの大人。
なんかね頼れる姉御。
あたし先輩だけど、頼れる要素ない。

なんやかんやツーカーな感じで一緒に組んでるうちら。
仕事がちょいちょい激動の時代に巻き込まれて、てゆうか激動の渦中で。
あっちの部署いけこっちいけそっちいくな次こっちみたいな。
あーちゃんもすんげー移動の末あたしの下に着いたの。
この部署ターミナルだよー終着点だよー。
だってあたし後輩もったことねーもん。
どうすんの?
え?詰んだ?
だってオンリーワンでロンリーワンな部署だもん。
教えられるほどの技術ないよ。

移動当初は、まーテンパってた。
だってあーちゃんできる子なんだもん。

素でね、あたしの教えられる事はもーない。既に無い。って思った。し、言った。

上司は笑ってた。んで笑って怒られた。
「医院でやってたキャリアは後輩にはない。技術は底辺のカンナでもなんらかの得意分野あるだろ」

カンナの得意分野は院長にうっせーハゲと思うこと、ほかのDr.こえーって怯える事くらいなんだけどなー。
つーか技術底辺?知ってるから。そこ言わないでもよくね?

て悶々としてたんだけど、あーちゃんがね、医院からの指示書持ってきてカンさーんてパタパタくるの。
んで【8のP側は張り出さない】って何?って聞いてくるのね。
彼女はP側が分からんというのですよ。
一般的に歯科用語でPって言ったら歯周病の略語なんだ。
だから、【歯周病側は張り出さないで作れ】って意味?なにそれ??ってパニックになってたんよ。
指示書と模型をよく見るように言ったの(なけなしの先輩風)

上顎の奥歯だったわけ。8つったら親知らずね。

もーこれはね、ドヤ顔にならざるを得ない。

「あー、矯正装置でナンスのホールディングアーチってありますやん?あれの口蓋部のレジンてパラタルボタンっていうんですよ。んで古いDr.は上顎の舌側を下顎舌側との区別でP側っていう人が居てるんです」

ナンスのホールディングアーチとは、矯正装置入門編みたいなくっそ簡単な装置だ。
歯科医院時代にゲロ吐く勢いで作ってた。パラタルボタンとは親友みたいなノリだった。
そんでクソハゲ院長はP側派だった。

もーね、これで信用回復出来たよね?
汚名返上しきったよね?


いやーもーね、気持ちえがったー。
あーちゃんのこの人デキる!っつー眼差し?
ちょーきもちー
なんこの気持ち良さ。
もっと見て。