会社と私と西先輩

うちの会社は概ね二つの部署がある。

入れ歯の部署
差し歯の部署

実際の名前は違うけどこんな感じ。
んで差し歯の部署の三課があたしの課。
三課のカンナって言えばそこそこ有名で。
なぜ有名ってゆうと、他部署の西先輩とお付き合いさせて貰うようになったんだわ(奇跡)
したらな、ちっさい会社特有の噂がだーーーーーっと流れてな。
この年末のクソ忙しい時期にだ、惚れた腫れたに突っ込んでくるんですわうちの会社の奴らは。
忙しいのに、内線ガンガンくんの。
お前にっしーとどーなん?みたいな。
…ほっとけくそ。

西先輩は野生の猫みたいな人だ。
直で聞こうがものなら引っ掛かれんじゃね?みたいなオーラがある。
でもきになるからカンナにきーちぇ⭐️っつー流れの模様。

カンナも大概おこだぞ。
きーーーー!!って感じで受話器をぶん投げたい(願望


西先輩は25歳の入れ歯課の人ね。
仕事上接点はいまほぼない。

好きになったのはカンナの方だった。
西先輩カッコいいなーって入社からほざいてた。
でも社内恋愛する気なかったし、なにより500円ハゲ×2を抱えてたので、まーアプローチあんましてなかった。
ただ、事あるごとにカッケーって言ってた。
そしたら、部署たらい回しで一瞬だけ同じ課に配属された。
入社半年目に起きた奇跡だった。
眼福やーって有難く仕事してたよ。
たらい回しにあったからほんと一瞬だったが。
そんときにアド交換とか出来てていやっふーって感じだったがまーなんもなく。

なんもないまま月日は流れ今月。
ちょーど今月頭に、差し歯作ってからの入れ歯と同時納品てゆー患者さんを持った。
珍しいケースだ。
他課との連携した仕事は緊張感ハンパない。

しくじったら何言われるか分かんない(三課に来た当初おんなじよーなケースでやらかして、入れ歯担当した人と入れ歯の部長とうちの部長の3人に雷落とされてる)。

めっちゃ必死にミスの有無チェックした。いつもの10倍は丁寧だった。

んで入れ歯の方に引き渡しに行った。
野暮用も兼ねて支店から本社まで足を運んだ。
んで担当者確認したら西先輩だった。
あ、下手なミスあったら死んだ。って死を覚悟した。
野生の猫は激昂するとジャガーとかになる。食い殺される勢いになる。
暴力はないけど、正論につぐ正論でボッコボコにされる。
一瞬だけ仕事一緒にした時に何度かやられた。カッコいいけど怖い西先輩。
ありとあらゆる手段の絶命法を考えたわ。

「ねえカンちゃん。」
「ひょあい!」
ほんとにひょあいだった。殺されると思った。
西先輩はあたしの差し歯ガン見したままだったから100パーやらかしたと思った。
実際やらかしてた。
「ここ磨き忘れてんだけど、俺にやらせる気で残してんの?」
ご指摘通り、研磨が甘いとこあります。

「すみません席を貸してくださいソッコーピカピカにします!…え?まってください。そこ磨く必要なくないですか?」

磨いてなかったのは入れ歯の中に入ってしまう所だった。
むしろあえて磨かない箇所だった。

「っち。引っかからなかったか。大丈夫だよ。差し歯わかんねーけど、あと(入れ歯製作)はやりやすそうだし。デリバってくれてサンキュ。」

ドッキリのたちの悪さ。
こいついつか見てろ。

「カンちゃんさー」

ひょあいってまた言いそうになったから一拍おいて返事した。

「支社戻らんなら飯行かね?」

断る理由もなく、西先輩の片ずけが終わるのを待った。
ふつーに食べて喋って(9割仕事)
本社にチャリ置いたままだったから戻ってもらった。

んで駐車場でまさかの告白。
「付き合っちゃおうよ」

絶叫した。
闇夜をつんざくカンナの悲鳴。
通報食らってもしゃーない悲鳴。
WHY

彼氏できたった。

この西先輩なるお方。
人望あるんだが、女関係が一切なぞ。
なぞな故に興味深々な会社の奴ら。

年末なのに人のゴシップかよ。
っけ。